ディケンズ・フェロウシップ日本支部

OLIVER TWIST

『オリヴァー・トゥイスト』

主な登場人物作品の概要
 

主な登場人物

作品の梗概

オリヴァーはロンドンから約75マイル離れた、ある教区の救貧院で生まれ落ちる。母は長旅の途中、行き倒れて救貧院に運び込まれたのであった。女性はオリヴァーを産み落とすと、胸飾りのロケットと指輪だけを後に残して息を引き取る。この品は臨終を見取った老婆のポケットに入る。

オリヴァーの命名は、教区の救貧院担当役人バンブル氏の手で機械的に行われる。この役人は生まれてくる子どもをアルファベット順に命名し、前回がSだったので今回はT、したがってトゥイストに決める。生まれた孤児の身許発見者には十ポンドの賞金を与えるとの掲示が出されるが、効無く、彼は養育院送りとなって虐待と放置の中で生き延びる。9歳の誕生日に救貧院に帰ってくるが、救貧院での食事は一日に3回、水のように薄い粥が椀に一杯与えられるのみ。ひもじさのあまり子どもたちはくじでお代わりを要求する人を選ぶ。貧乏籤を引いたオリヴァーは、水を打ったような静けさの中でお代わりを求めた。救貧院の管理者達はすぐさま彼を監禁、そして彼を引き取る親方には賞金5ポンドを与えるとの広告を出す。

いち早く申し出てきたのは煙突掃除の親方であったが、日頃のひどい評判が問題となって却下、かわって葬儀屋のサワベリー氏が引き取る。オリヴァーは悲しそうな顔付きゆえに子どもが亡くなった時の葬儀用お供として大切にされるが、先輩格のノア・クレイポールはこれが気にくわない。さんざんに悪態をつかれ、いじめ抜かれたあげく、ついに堪忍の緒を切らしたオリヴァーは、かなうはずもないノアにつかみかかり、これを殴り倒す。その結果、サワベリー夫人によって地下の物置に閉じ込められる。 オリヴァーを哀れに思うサワベリー氏は、ある晩彼を監禁から解いてやるが、彼はもはやここにとどまる気持ちも消え、荷物をまとめると早朝に抜け出し、一路ロンドンに道をとる。

ロンドンに到着したオリヴァーは、ジャック・ドーキンズというスリ仲間の少年に出会う。彼はオリヴァーの状況を見るなり巧みに近づき、今夜の宿を貸してくれる親切な老人を紹介してあげようと申し出る。こうして彼はスリ少年たちを束ねる老獪なユダヤ人フェイギンの手中に易々と飛び込むことになった。翌朝には楽しいゲームを教えてもらい手仕事の訓練も受けて、数日後には初仕事に出かける。仕事がスリであることに気付いたときは手遅れで、ロンドン市中を追い回され、倒れ傷ついて警察署に連行される。しかし、裁判の席で親切なブラウンロウ氏に救われ、ペントンヴィルの閑静な邸宅で介抱を受ける。彼と家政婦のベドウィン夫人は、オリヴァーが部屋に飾る肖像画の女性とうりふたつであることに驚く。

すっかり回復したオリヴァーに、ブラウンロウ氏はお金をわたし本代を払ってくるよういいつける。つむじ曲がりの友人グリムウィッグ氏は、子どもなど信じられるものか、ひとつ賭けをしようと申し出るが、不幸にもこれが的中する。オリヴァー捕縛を知ったフェイギンは、何としてもオリヴァーの居場所を突き止め、奪回しようと八方手を尽くしていたのである。何も知らぬオリヴァーは、書店への道すがら、フェイギンの一味であるナンシーに行く手を阻まれる。

ふたたびフェイギンの手に落ちたオリヴァーは、ロンドン東部の隠れ家に監禁され、ロンドンのはるか西方チャーチーにある一軒家に押し入る計画に無理矢理組み込まれる。ビル・サイクスとともに隠れ家を立ち、ある時は雑踏に紛れ、またあるときは足早に駆け抜けながら、仲間と落ち合って目的地に着く。小さな窓から入ったオリヴァーは、命令通り表戸を開けず、家の人に気付かせようと階段を駆け登ろうと考える。強盗は失敗に終わり、オリヴァーは腕に銃弾を受ける。サイクスは傷ついたオリヴァーを道端の溝に横たえて逃走。

オリヴァーの行方がわからなくなったブラウンロウ氏は、彼の消息を知らせたものには5ギニの賞金を与えるとの広告を出し、これが上京したバンブル氏の目に留まる。彼はブラウンロウ氏に会い、オリヴァーの性悪さに熱弁を振るい、証拠にと持参の書類を広げる。約束の金は払ったものの、老人は大いに失望する。しかし、オリバーの謎がこの時から少しずつ解けはじめる。バンブル氏が養育院のコーニー夫人を訪ねお茶をごちそうになっている時、オリヴァーの出生に立ち会ったサリー婆さんが危篤に陥る。コーニー夫人が駆けつけると、婆さんは臨終の母から盗みを働いたと告白してこと切れた。何を盗んだのかは聞けなかった。その謎を解くかのように登場するのがモンクス。彼はフェイギンを訪ね、オリヴァーを悪人に仕立て上げるよう、しかし殺してはならないと依頼して立ち去る。

話かわって、サイクスに捨てられたオリヴァーは溝から這いだすと、よろめく足で一軒家まですすむ。 メイリー夫人と養女であるローズは、彼を招じ入れる。オリヴァーの身の上話は二人の同情を掻き立て、警察の調書に対しては、医者でありメイリー家の友人であるロズバーン氏が彼を大いにかばう。病気が回復すると、彼はロズバーン氏とともにブラウンロウ氏を探しに出かけるが、その老紳士はグリムウィッグ氏とベドウィン夫人とともに西インド諸島に旅立ったあとであった。彼は恩人に会うことも、失踪の釈明をすることもできなかった。しばらくして暖かい時候になると、メイリー家の人たちは田舎へ出かけ数ヶ月を別荘で過ごす。幸福な田園生活のさ中にローズが病に倒れ、命が危ぶまれた。奇跡的に立ち直ったとき、メイリー夫人の息子ハリーがやってくる。彼はローズを愛している。ところが、母親はローズの素性に疑問を抱いている。ある日、ハリーが意中を打ち明けたとこる、ローズは自分の名前に汚点があるので、有望な青年に対してかって泥を塗るような結果を招くことは避けたいと告げる。

バンブル氏はいまでは教区役人を辞し、コーニー夫人と結婚して救貧院長におさまっている。しかし、独身時の期待とは裏腹に、結婚後は女房の尻に敷かれ面目は丸つぶれである。憤懣を晴らすべく立ち寄ったパブで、はからずもモンクスに出会う。モンクスはオリヴァーの母を看取った婆さんと話がしたいと切り出す。死んだと述べたものの、金が入ると見た彼は、妻に会って聞くよう提言する。多額の謝礼を手にしたバンブル夫人は、婆さんの握っていた質札から「金のロケットと金の結婚指輪」の入った袋を請け出したと述べ、それを手渡す。モンクスは受取るなり川の中に捨てた。証拠隠滅である。ついでモンクスはロンドンに引き返し、フェイギンに会うとオリヴァーを陥れる計画を語る。これをひそかに盗み聞いたナンシーは、ローズ・メイリーにすべてを打ち明けようと決心し、モンクスの話にあったホテルへ赴く。ここで彼女はオリヴァーの素性を証明するものはすべて川の中に消えたこと、彼に帰すべき財産はすべてモンクスの所有となること、彼を泥棒に仕立て挙げ句の果てに重罪で死刑にしてしまえば遺言の条項を無効にできること、くわえて彼がモンクスの弟であると逐一物語る。

ローズはお礼を述べるとともに、ナンシーをまともな人生に引き戻してあげたい、お金を差し上げたいと申し出るが、彼女はこれを拒絶し、次の会見のみを約束して別れる。約束の日曜日、ナンシーはサイクスの承認がもらえず、どうしても抜け出せない。苛立つ彼女を見て、フェイギンは何かあると感づき、見張りをつける。一週間後、真夜中にぬけ出す彼女を見張りが尾行する。その一部始終をフェイギンから聞いたサイクスは、帰宅するなりピストルの台尻で彼女を撲殺する。血まみれの彼女は、ローズからもらった白いハンカチを高くかざし、神の慈悲を乞いつつこと切れる。その瞬間から、サイクスに罪の仮借が恐ろしい力で降りかかる。ナンシーの哀願する目が自分に襲いかかるのを覚えてサイクスは隠れ家をあとにする。火事現場で獅子奮迅の働きをして心の業火を消したかと思うと、次の瞬間、恐怖はふたたびまい戻る。逃走に逃走を重ね、ついにテムズ南岸の隠れ家に落ち延びたときは、亡霊同然の姿となる。しかし警察は執拗に彼を追う。彼は一か八か、屋上からどぶ川に身を投げて逃亡を企てるが、誤って命綱を首に巻きつけてしまい、宙づりとなって即死する。

次いでモンクスも捕らえられる。ブラウンロウ氏の調査により、モンクス、オリヴァー、母(アグネス)、ローズ、およびブラウンロウ氏の関係がことごとく明らかになる(49章)。モンクスはオリヴァーの腹違いの兄で、ローズは母の妹、ブラウンロウ氏は父の友人で、父自身の手になる母の肖像画が彼に託されていたのであった。

フェイギンもまた捕らえられ、独房ですごした後、ニューゲイト獄前で処刑された。ハリーは身分を捨てて牧師となり、ローズと結婚。モンクスは遺産の一部をもらってアメリカの奥地に行くが、お金を使い果たしてふたたび悪の道に走り、獄中にて死亡する。オリヴァーはブラウンロウ氏の養子となって幸せに暮らす。

(担当:西條隆雄氏)

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